精神分析理論は、キャリアカウンセリングの現場でどのように活かせるのか

本日は、精神分析理論が、キャリアカウンセリングの現場でどのように活かしていくことができるかについて、考えていきたいと思います。

自由連想法(カウチに横たわる女性)

精神分析と聞いて抱くイメージ

みなさんは、「精神分析」と聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。

僕は、療法家が患者に対して一方的に解釈を与えるといったイメージを持っていました。ですので、キャリアカウンセリングの現場においては、活用しづらいという風に考えていました。だから、あまり学ぼうとも思っていませんでした。

しかし、国分康孝さん著の「カウンセリングの理論」を読んでこの考え方が変わりました。考えが変わるきっかけとなった部分の一部を以下に抜粋します。

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フロイディアン、アドレリアン、ロジェリアンの三派それぞれのカウンセラーの面接録音を分析したフィードラーは、次のことを発見した。

熟練者になるほど、カウンセラーの面接中の言葉には学派の差異が見出されないということである。フロイディアンも受容的な反応をするし、ロジェリアンも解釈的なことばを発する。

ところが、未熟なフロイディアンほど解釈が多く、未熟なロジェリアンほど受け身的な受容が多いのである。

しかも面接を受けて何がよかったかについての来談者の感想は「先生は私を理解してくれた」「先生は暖かかった」というリレーションの有無を述べている。

学派の相違はそこには反映されていない。

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(国分康孝著;「カウンセリングの理論」28ページより抜粋)

フロイディアンとは、フロイトの提唱した精神分析に立脚したカウンセラーのことです。以下同様に、アドレリアンは、アドラー心理学に立脚したカウンセラーで、ロジェリアンはロジャーズに立脚したカウンセラーです。

熟練者になるほどその相違はないという研究結果が出たことに驚きました。これまでフロイディアンとロジェリアンは全く別のカウンセリングを行っていると思っていたからです。

この研究結果に対する僕の解釈は、「どの理論も目指すところは同じで、アプローチが異なるだけ」というものです。とすれば、広く様々な理論の中から、自分の現場に何か活かせるものを学んでいく必要があるなと感じました。

しかし、精神分析を始め、各理論をしっかり学び始めたら大変なことになりそうです。なので、まずは広く浅くキャリアカウンセリングの現場にどういった点が活かせそうかという目線でそれらをピックアップしていきたいと思っています。

精神分析理論のキャリアカウンセリングに活かせる点;①洞察力を高める

キャリアカウンセリングにおいて、クライエントを洞察するということは大切です。

クライエントがどういう人間か、事柄をどのように捉えているか、そしてそれに対してどのような感情を抱いているのか、をカウンセラーが正確に理解していく(理解しようとする)ことは非常に大切なことです。

精神分析で行われていることは、端的に言えば、「クライエントの無意識を洞察し、解釈を伝える」ということだと僕は理解しています。

ですので、精神分析から、キャリアカウンセリングにおける「クライエントがどういう人間か」を洞察するための知識や技法が学べると思います。

具体的な例としての1つ目は、防衛機制やコンプレックスです。

防衛機制やコンプレックスについての知識があれば、クライエントとの応答の中で、例えばクライエントの中で「合理化」という防衛が働いているのではという仮説をカウンセラーの中で持つことによって、どうしてそういう防衛を持つようになったかということに対しての問いかけができるようになるのではと考えます。

つまり、洞察の類型(カテゴリー)をカウンセラーが持てるようになるということです。

また、2つ目の例としては、感情転移です。

感情転移とは、クライエントが家族などの近親者に向けている感情をカウンセラーにも向けてくることです。

感情転移という概念は、他の理論ではあまりありません。しかし、感情転移に気づくことで、クライエントを洞察することに有用だと考えます。

精神分析理論のキャリアカウンセリングに活かせる点;②抵抗への乗り越え方を学べる

人と人とのかかわりの中では、互いに必ず抵抗が生じます。対人支援の現場において、クライエントの抵抗をどう乗り越えていくかというのは、大きなテーマでしょう。

「精神分析」においては、抵抗に気づき、それを取り除く方法をを重視しています。それは、精神分析では深層心理を解明しようとするので、深く心理をオープンにしていくために、抵抗を一つ一つ取り除くことが重要だからです。

キャリアカウンセリングにおいても、精神分析でいうところの抵抗の概念とその扱い方について知っておくことは非常に有意義なのではと思います。

精神分析理論をキャリアカウンセリングにおいて取り入れるときの注意点

精神分析理論を学ぶことで、キャリアカウンセリングの現場に活かせることををこれまで考えてきました。しかし、精神分析理論をキャリアカウンセリングの現場に取り入れるうえでしっかり意識しないといけないこともあります。

それは、「対象範囲の違い」と「目的の違い」です。

「対象範囲の違い」についてです。キャリアカウンセリングの対象者は、パーソナリティ自体に問題を抱えている人(メンタルヘルスに問題を抱えている人)ではありません。

一方、精神分析の対象者は、パーソナリティ自体に問題を抱えている人も含んで、非常に広範な領域を対象としています。

次に「目的の違い」についてです。キャリアカウンセリングの目的は行動変容とするのが良いと僕は考えています。(根拠は、こちらの記事をご覧ください)

一方、精神分析の目的は、人格変容だと考えられます。

このように、対象範囲や目的に相違があるので、考え方をそのまま持ってきたときに、どうしても違和感を感じることがあると思います。それをうまく調整して活用していくのが大切なのかなと思います。

これまで、「精神分析」をキャリアカウンセリングの現場に取り入れようとは考えていませんでした。しかし、「精神分析」を学ぶことで、現場で活かせる選択肢が増えるのではないかと考えております。

もし、この記事を読んでいただき、同じように感じられた方は、これを機会に「精神分析」について改めて学んでみるのはいかがですか。

<参考文献>

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