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交流分析の解説とキャリアカウンセリングにおける有用性の考察(vol3;心理ゲームと脚本分析)

本日は、交流分析の基本的概念の「心理ゲーム」と「脚本分析」について解説を行いながら、交流分析がキャリアカウンセリングにどのように活かせるかについて一緒に考えていきましょう。

「心理ゲーム」の理解

「心理ゲーム」とは、「ストローク」の回で話した「裏があるやり取り」かつ「交差的やり取り」のことです。

例えば、10歳の男の子が叔父さんに次のことを言うとしましょう。

「この飴、美味しいよ。はい、あげるよ」(「親」→「子ども」)

心の中では、(もうすぐ誕生日が近いから、ご機嫌を取ろう)(「子ども」→「親」)

それに対して、叔父さんがこう返します。

「うん、ありがとう。美味しいね」(「子ども」→「親」)

心の中では、(そんなことぐらいで、ご機嫌はとられてやらないぞ)(「子ども」→「子ども」)

つまり、見かけは相補的なかかわりで、何も問題がないようにみえます。しかし、裏では相手に対して肩透かしを食わすような交流のことです。

波風を立たせないように本音を隠してコミュニケーションを取ることがありますが、心の中では相手を拒絶しているのに、表向き好ましくふるまうのは「心理ゲーム」です。

このような交流を交流分析では好ましくないと考えます。ロジャーズ理論で自己一致という考え方がありますが、「心理ゲーム」はコミュニケーションにおいて自己不一致を起こしている状態ともいえますね。

人が「心理ゲーム」を行う理由

本来は、本音を出してコミュニケーションを取るほうが楽だと思います。しかし、人は折に触れ「心理ゲーム」を演じてしまいます。これはなぜでしょうか。その理由とされているものを列挙していきます。

1つ目は、ストローク(関心・愛情)を得るためです。例えば、心にもないお世辞を言うことがこれに当てはまります。

2つ目は、「私はOKである」ということを証明したいからです。これは、自慢話や説教などがこれに当たります。

3つ目は、相手を拒絶したいという抵抗の心理があるからです。これは、誘いを断るときや居留守をすることなどが当たります。

4つ目は、対決を怖れている事柄から目を背けたいからです。これは、冗談を言ってごまかしたり、怒ってごまかしたりすることなどが当てはまります。

5つ目は、スタンプを集めたいからです。スタンプとは、幼少期に得たある感情のことです。その感情を再び得るために心理ゲームを演じるという場合です。これは様々なケースがあります。

人は、このような様々な理由でもって心理ゲームを演じてしまいます。これは特別なことではなく、誰しもが「心理ゲーム」を演じます。

「脚本分析」の理解

これまで見てきた「構造分析」「ストローク」「心理ゲーム」などは、観察できるコミュニケーションの取り方の分析です。これらのコミュニケーションの取り方は、どのような人生観を持っているかに影響されます。この人生観のことを交流分析では、「脚本」といいます。

この「脚本」を分析することによって、その中に含まれる不合理や不具合を修正し、より良い状態になることを目指すのが脚本分析です。

つまり、これまでのコミュニケーションから観察できるものをもとに、脚本を見出しそれを修正して、クライエントをより良い状態にするという交流分析の目的となるところだと考えられます。

このような「脚本」は大体四種類あると言われます。

「脚本」の種類

1つ目は、文化脚本です。「男は度胸、女は愛嬌」みたいな文化的固定観念です。

2つ目は、下位文化脚本です。「九州男児は男らしい」とか「関西人はお笑い好き」とかです。

3つ目は、家族脚本です。「我が家は、家長が絶対である」とかです。

4つ目は、個人脚本です。「自分は、欲求を表に出してはいけない。」とか「私は失敗してはいけない」とかです。

このように、抽象性が異なるレベルのそれぞれで、様々な脚本を僕たちは持っています。論理療法でいうところの信念でしょう。このような考え方が時にクライエントを苦しめたり、邪魔をしたりします。

交流分析では、幼少期にこのような「脚本」をインストールされると考えます。それにより行動を支配され、結果として運命までも支配されていくと考えるようです。この「脚本」に対処していくというのが交流分析の真骨頂ではないでしょうか。

それをコミュニケーションという観察可能なものから、その人のロジャーズでいうところの自己概念を洞察して見出していくのが、脚本分析です。

「交流分析」がキャリアカウンセリングにおいてどのように活かせるか

交流分析の利点はなんといってもその観察可能性にあると思います。目に見えるコミュニケーションの取り方をもとに洞察をしていくので、「構造分析」や「ストローク」について少し指示的にかかわったとしてもクライエントは受け入れやすいのではないでしょうか。

そして、意識が高いクライエントだったら、自分の自我状態やストロークの偏りに気づくだけで、自発的に改善していくことが期待できます。

このように、ロジャーズ的な非指示的なかかわりだけではなく、クライエントの自己探索の支援の先に、問題解決をも志向したかかわりをしていくキャリアカウンセリングにおいては、特に交流分析の理解は有意義になるでしょう。

又、問いかけの面でも交流分析は有意義です。

キャリアコンサルタントとしてのクライエントとの基本的なかかわりとして大事なのは、クライエントの自己概念に対する洞察を深めるような問いかけをすることだと思います。

僕自身キャリアカウンセリングの現場でうまく問いかけができなかったなと反省することがあります。多くのキャリアコンサルタントの方も現場でそのような反省をされることがあるのではないでしょうか。

クライエントに「なに」を「どのように」問いかけるのかということに関しても、交流分析はヒントを与えてくれます。クライエントの言動に焦点を当て、「あなたの何がそのような言動をさせるのですか」といったような問いかけです。

ただ、交流分析は下手するとそのタイプに当てはめてしまいそうになります。キャリアカウンセリングを行う中で、交流分析の理論を意識して行うときは、交流分析の提示する類型にクライエントを恣意的にあてはめないように気を付ける必要があると思います。

これまで、3回の記事で交流分析の理論を振り返ってきました。様々な理論を学ぶと、キャリアカウンセリングの幅が広がるのを実感できます。カウンセリング中にふと頭の中に、このクライエントはこういうところがあるのかなとこれまでになかったような洞察が生まれるのに気づきます。

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