「セルフキャリアドック制度」の導入のメリットと導入の流れ
本日は、「セルフキャリアドック制度」の導入のメリットと導入の流れについてお話ししていきます。
「セルフキャリアドック制度」を導入するメリット
「セルフキャリアドック制度」は、企業や団体において、その労働者に、キャリアコンサルティングを、定期的(労働者の年齢・就業年齢・就業年数・役職等の節目)に提供する制度です。
キャリアコンサルティングとは、従業員が主体的にキャリアプラン(働き方や職業能力開発の目標や計画)を考え、これに基づいて、働こうとする意欲を高める相談を行うものです。
この「セルフキャリアドック制度」を導入すると3つの利点があります。
1つ目、助成金がもらえる
1つ目は、助成金をもらえると利点です。
セルフキャリアドック制度を導入すると、人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)をもらえます。助成金金額は、47.5万円(生産性要件を満たすと60万円)です。
助成金の存在は大きいですね。しかし、もちろん、「セルフキャリアドック制度」を導入する目的は、助成金だけではありません。
2つ目、労働生産性が向上する
2つ目は、労働生産性が向上するという利点です。これが「セルフキャリアドック制度」を導入する主な目的です。
従業員がキャリアコンサルティングを受けると、自己理解が深まり、自分と仕事とのかかわりを再設定します。
キャリアコンサルティングを受けると、その人は、仕事と自分自身とのかかわりを見つめ直す機会になります。「どうしてこの仕事をしているのか」「仕事を通じて自分は何をしたいのか」を自問自答する機会になります。
こうなりたい、こうしたい、という意識が目覚めたり、より強く自覚するきっかけになります。この意識こそが、内発的な動機付けとして効果的なものになります。
それにより、仕事に対して主体性が生まれるようになります。。結果として従業員の労働生産性が向上します。
また、対象によっては、「職場定着率が向上する」、「だらだら働かず、スパっと辞めてくれる」、「職場復帰を円滑に行える」などの効果も期待できます。
3つ目、組織開発や人的資源管理に役立つ
3つ目は、 組織の組織開発や人的資源管理に役立つという利点です。
従業員にキャリアコンサルティングを行うことによって、従業員が組織において抱えている問題が明らかになります。
それにより、組織における問題解決に役立てることや、従業員のキャリア開発をどうするかという計画を立てるのに役立てることができます。
(*注意;キャリアコンサルタントには守秘義務があるので、キャリアコンサルティングで知り得たものを直接報告するなどはできません。3つ目の利点は、セルフキャリアドックを導入するだけでは実現するのが難しいですので、直接的な利点とはいえないかもしれません)
「セルフキャリアドック制度」を導入する流れ
「セルフキャリアドック制度」を導入する流れは以下のようになります。
①事業内職業能力開発の担当者の選任と計画の作成
②セルフキャリアドック実施計画書の作成
③セルフキャリアドック制度を盛り込んだ制度・導入適用計画書の作成・届け出・認定
④導入する制度を就業規則(又は労働協約)に規定・届け出
⑤作成したものの内容を従業員に周知
⑥対象者にキャリアコンサルティングを実施
⑦助成金の支給申請
このような段階があります。それぞれについてもう少し詳しく見ていきます。
①事業内職業能力開発の担当者の選任と計画の作成について
まず、会社の中で従業員の能力開発を行う担当者を任命します。今後のセルフキャリアドックを始めとした従業員の能力開発の中心人物となる役割です。
経営者や人事部の部長など、人材開発の責任者である方を任命するのが良いです。そして、その方が事業内職業能力開発の計画を作成します。事業内職業能力開発の計画の様式は、任意です。
②セルフキャリアドック実施計画書の作成
まず、セルフキャリアドックを担当するキャリアコンサルタントを決めます。(社内、社外どちらでも大丈夫です)
そして、そのキャリアコンサルタントの担当者と事業内職業能力開発の担当者が協議し、セルフキャリアドックの実施計画書を作成します。
セルフキャリアドック実施計画書の内容として、対象となる者、実施タイミング、実施者、実施方法などを定めます。セルフキャリアドックは、原則として従業員の全員が対象となります。
③セルフキャリアドック制度を盛り込んだ制度・導入適用計画書の作成・届け出・認定
人材開発支援助成金を受けるために制度・導入適用計画書の手続きをしないといけません。制度・導入適用計画書とは、人材開発のための制度の何をどのように導入していくかという計画です。
制度導入・適用計画を所管の労働局に提出し、労働局長の認定を受ける必要があります。そして、その計画に従い人材育成制度 を導入・実施する必要があります。
④導入する制度を就業規則(又は労働協約)に規定・届け出・⑤作成したものの内容を従業員に周知
人材開発としてこのような制度を導入しますという内容を就業規則に規定して、届け出ます。
報酬や労働時間などと同様に、人材開発に関する情報は従業員にとって非常に大切な情報です。就業規則を修正したあと、しっかり周知します。
また、キャリアコンサルティングはキャリアコンサルタントと従業員の共同作業です。従業員の参加する意識が弱いと効果も弱まります。そういった意味でも、どうしてそのような取り組みをおこなうかというところまでしっかり周知していくということが重要になってきます。
⑥対象者にキャリアコンサルティングを実施
セルフキャリアドック実施計画書において、対象者とキャリアコンサルティングを行うタイミングを決めています。そのタイミングが来た時に、キャリアコンサルティングを実施します。
助成金の対象となるのは、ジョブカードを使用して行うキャリアコンサルティングです。キャリアコンサルティングを受けたあと、従業員にジョブカードへの記入をしてもらいます。
⑦助成金の支給申請
助成金の支給申請を行います。申請は、原則各都道府県の労働局に行います。申請書類は以下のものとなります。追加で労働局からそのほかの書類を要請されることもあります。
①人材開発支援助成金 制度導入・適用計画届(制度導入様式内)
② 中小企業事業主であることを確認できる書類
③ 主たる事業所と従たる事業所を確認できる公的書類など 登記事項証明書などの写し
④ 事業所確認票(制度導入様式内)
⑤ 就業規則または労働協約
⑥ 企業全体の雇用する被保険者数が被保険者であることが確認できる書類(雇用契約書 (写)等)(50人を超える場合は50人まで)
⑦ セルフ・キャリアドック実施計画書(制度導入様式内)
⑧ キャリアコンサルティング実施者の資格を確認できる書類(職業能力開発促進法30条の20 に規定する「キャリアコンサルタント登録証」の写し)
「セルフキャリアドック制度」を導入するのに助成金が下りるのはいつまでかわかりません。この人材開発支援助成金の機会に、ひとりひとりがもっと輝いている会社が増えたら良いなっと思っています。