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新人研修において必要なことは何か

この記事は、キャリコネニュースの記事(https://news.careerconnection.jp/?p=39440&page=2)を情報元として作成しております。

新人研修後に精神疾患を発症し、その後自殺したという痛ましい出来事があったようです。この記事だけだとそのあたりの因果関係の程度はわかりませんが、新人研修のあり方について考えさせられる事件です。

「意識行動変革研修」という名前の新人研修だったようです。

名前から考えるに、学生から社会人へと変わるにあたり、意識や行動も変えましょうねということを目的とした研修なのでしょう。その目的や意図については必要性を感じます。しかし、そのやり方が、厳しく外部から圧力を加えたり強制したりすることによってその目的を達成しようとする研修内容ならば、そのやり方は反対です。

外部からの負荷により短期間の変化を起こそうとする研修の効果は期待できない

さながら軍隊のような被研修者を支配し、思い通りに従わせようとする研修は、軍隊のような組織になることを期待する企業組織においては有効かもしれません。

つまり、上司や先輩のいうことは絶対で、部下は従順にそれに従うことを求められる組織です。受けた指示を迅速、正確に、疑いなく実行することが求められるような組織です。

しかし、そういった会社では、個人からイノベーションが生まれることは期待しづらいでしょうし、離職率も高くなると思います。

僕も昔、ある会社に入社してすぐのタイミングで配属先の上司に、「お前のこれまでの人生がどうだったかなんて知らない、お前の価値観もプライドも全部捨てろ」と言われたことがあります。

でかい熊のような図体をした人だったのですが、僕はその人に対しては反発心とストレスしか感じませんでした。そういった感情を抑え込んで、言われる通り従順に仕事をしたとしても高いパフォーマンスは到底望めないでしょう。幸い僕の場合はその人が入社5か月目に退職したので救われましたが。

個人が社会人としての自覚を持って、自律して仕事していくのを求めるのであるならば、このような研修は全く相応しくないと思います。

外からの心理的な負荷をかけて強制的な変化を促しても、それは長続きしません。本当の学習や変化は個人の内側から起こります。短期間で外部からの負荷により変化を促す研修は効果がたとえあったとしても、打ち上げ花火のようにすぐにその効果は失われてしまうのではないでしょうか。

どのような新人研修が相応しいのか

それではどのような新人研修が相応しいのかについて、考えていきましょう。

それは企業によって異なると考えられます。会社がどのような組織で、どのような個人をその構成員として求めるのかによって異なります。

具体的な事例として、キャリコネニュースの記事中にあった「チームワークの醸成」「社会人としての自立」を目的とする場合ではどういった内容が相応しいかを考えていきましょう。

「チームワークの醸成」を行うのに効果的な方法

まず「チームワークの醸成」を目的とする場合について考えていきます。

社内でのチームワークの醸成はどうしたらできるでしょうか。それはチームの構成員の相互理解を深めることが効果的だと思います。相互理解が深まれば、関係性やそこで行われるコミュニケーションも深くなると考えられます。

そして、相互理解を深めるためには、自己開示のハードルを下げることが有効です。この自己開示の程度は個人差が大きくあります。

自己開示を行うことが苦手、あるいは強いストレスを伴う人は、自己開示をあまり行わないでしょう。その場合コミュニケーションはどうしても表面的な浅いコミュニケーションになってしまいがちです。

またこういった人たちは、コミュニケーション自体を回避しようとすることも多いでしょう。それらが「チームワークの醸成」を阻害するということは容易に想像できますね。

つまり、「チームワークの醸成」を短期間で効果が出ることを期待する研修なら、参加者の自己開示のハードルを下げるということに焦点を当てるのが効果的だと考えられます。

それは、強制的に話したくないことを皆の前で話させるような研修ではありません。それは自己開示ではありませんし、そんなことをすれば全くの逆効果です。

自己開示とは自分の気持ちを自然と自分で開示することです。どこまで開示するかはその自己開示をする個人の裁量で行われます。

強制してそれを無理に開示させるとその後心理的な防衛ができてしまうので逆効果です。強制するのではなく、自然とそれを話した話せるようにしないと意味がありません。自分の意志で自分の開示できる範囲を広げることができ、その自己開示を他者に受容される経験ができれば、安心してまた自己開示をしようという気になります。

つまり、自然と自己開示をしたくなる雰囲気、自己開示をしても拒絶されないと思える雰囲気をつくり、参加者それぞれ少しづつ自己開示していく研修が効果的だと思います。

自己開示のハードルが相対的に低い参加者から自己開示を行っていき、その自己開示が受容されているのを観察することで、自己開示のハードルが相対的に高い参加者も少しずつ自己開示していくという内容です。これを心理学的にはエンカウンターグループと言います。

とにかく、強制的に自己開示を促すというのは参加者に多大なストレスを与える可能性があるとともにその効果自体についても疑わしいです。どうしてそんな研修がまかり通っているのでしょうか?どういう効力があるのか知りたいです。

「自立」を促すために効果的な方法

「社会人としての自立」を目的とする場合について考えてみます。

社会人とか学生とか、そのような社会的な役割と個人が自立しているかどうかは別の概念であり、そこに因果関係はありません。

社会人になったから自立するというものではありませんし、社会人になったからには自立すべきだということもないでしょう。

しかし、学生だろうが社会人だろうが、自立するということは大切なことだと僕は考えています。

ですので、今回は「社会人としての自立」ではなく、「個人として自立する」ために有効な方策を示したいと思います。

それは、「自分とかかわるものに意味を見出す」ということです。仕事を例に考えてみましょう。

自分の仕事に意味を見出して仕事をする人は、主体的・能動的に仕事とかかわります。このような状態は「自律している状態」のひとつといえるのではないでしょうか?

この場合、他者から意味を与えられるのではなく、自分で意味を見出していかないと意味はありません。(ただ、他者から与えられた意味が、徐々に腑に落ちてきて、自分自身の意味として見出せるということも良くあります。)

自分の仕事に意味を見出すのに効果的な一つの方策は、キャリアデザインです。キャリアデザインとは、自分のキャリアを未来に向けて描いていくという意味合いで使用していますが、これができると未来から今を見ることができるようになります。

キャリアデザインの研修は多くの会社で行われています。

その研修対象者も新人に限らず、広範囲に及びます。ですので何をいまさらと思われる方もいるかもしれませんが、その研修の目的は明確になっているでしょうか?

キャリアデザイン研修の目的は、参加者がより自立して仕事をするようになるということに置くのが良いのではないかと思います。

自立して仕事をする人のパフォーマンスはそうではない人と比べると当然高くなります。なぜ、高くなるかというとその理由はモチベーションです。

しかし、それ以上の効果もあります。それは、自立している人の方が成長スピードが段違いに速いということです。

当初はモチベーションによるパフォーマンスの差に、そこに成長格差によるスキルの差も加わり、どんどんとその差は広がっていきます。

ただ、自立したことがきっかけで離職率は高くなるかもしれません。しかし、離職率が高いことは必ずしもマイナスとはいえません。

僕が以前お世話になったリクルートという会社は離職率は高いですが、組織においてそれは全く課題になっていません。

在職中に思いっきり働いてもらい、支払う給料以上の成果を上げてもらえば良しとしています。そして人の入れ替わりが流動的で、変化が激しい方が組織は停滞しづらいという利点もあると考えられます。

「自立」を促すための適正なキャリアデザインの研修をおこなうということが非常に有意義だということがお分かりいただけたでしょうか。キャリアデザインの研修も目的を明確に運用していくのが大切ですが。

以上から、僕はこのキャリコネニュースにあるような新人研修に反対です。なぜこのような新人研修が未だにまかり通っているのか、本当に疑問です。

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