top of page

シャイン博士のキャリアの理論についての簡単な解説

本日は、組織心理学の父ともいえる、エドガーシャイン博士のキャリアの理論について簡単に解説していきたいと思います。

シャイン博士のキャリアのスタート

マサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院の名誉教授のシャイン博士は、シカゴ大学、スタンフォード大学、ハーバード大学などで、心理学や社会学を学ばれたようです。

学費を賄うために陸軍から奨学金をもらっていたため、卒業後は軍関連の施設で勤務する義務があったそうです。

それもあり、陸軍関連の病院の勤務から、キャリアをスタートされます。そこで、元捕虜の復員者の洗脳・強化をおこなったそうです。

そして、それが終了したあと、民間のビジネスの場で、同じような洗脳・強化に関する研究に移行しました。これは、「個人がどのように組織に染まっていくのか」ということの研究でした。

しかし、これは失敗するのです。

「個人がどのように組織に染まっていくのか」ということを研究していくと決して個人が組織に染まりきらないことを見出したのです。そして今度は、組織からの影響を受けても決して失わないものを研究することに移行し、有名なキャリアの理論のキャリア・アンカーを見出すのにいたったのです。

皮肉ですけど、面白いですよね。

この研究をきっかけにキャリアの理論や、それだけでなく組織開発などの経営学の領域の理論でも先進的な研究を行ってこられたようです。

個人的には、キャリアコンサルタントの現場で最もお世話になっている理論です。企業における人的資源管理の問題や、従業員のキャリア開発の問題において、非常に参考になる理論です。キャリアカウンセリングの最中もこの人のキャリア・アンカーは自律・独立だなっとか頭の中によく浮かんできます。(キャリア・アンカーについては後述)

シャイン博士の理論の特徴

シャイン博士のキャリアの理論の特徴として次の3つを抑えておくと、理解しやすくなると思います。

①「組織と個人の相互作用の中で、個人がいかにキャリアを形成していくか」といった組織と個人の相互作用という視点から理論を構築している。

②キャリアを捉えるときには「外的キャリア」と「内的キャリア」の2つの軸から捉えることができるというキャリアの捉え方。

③人が生きている領域には、「生物学的・社会的」「家族関係」「仕事・キャリア」の3つがあり、それらが相互に影響しあって、人は存在しているという考え方。

これらの理論の基本的な考え方を土台に、「キャリア・アンカー」「キャリア・サバイバル」「キャリア・コーン」「キャリア・サイクル」などの理論を展開されています。

組織と個人の相互作用

多くのキャリアの理論家は、個人のキャリアの形成そのものに焦点を当てています。シャイン博士の理論で特徴的なのは、組織と個人の相互作用の中における個人のキャリア形成に着目している点です。

まず個人の仕事に対するニーズ(これをキャリア・アンカーと名付けています)を明らかにしていき、次に組織の個人に対するニーズを分析(これをキャリア・サバイバルと名付けています)します。

そしてその両者をうまくマッチングできるようにキャリアをプランニングしていくのがシャイン博士の提唱する考え方です。

これを頭に入れていると、キャリア・アンカーやキャリア・サバイバルに関して理解しやすくなると思います。

「外的キャリア」と「内的キャリア」

「外的キャリア」とは、履歴書や職務経歴書などに表される経歴や実績、獲得した地位などのことです。他の人にも伝えやすく、理解されやすいものです。名刺に記載されるような情報は外的キャリアですね。

「内的キャリア」とは、そのような仕事での経験の中で、何を感じ、何に興味を持ったかといった内面におけるキャリアの捉え方です。これは、他者からはわかりづらく、時に本人もはっきりと自覚できていないものです。

キャリアというものをこの2つの側面から捉えているというのが一つの特徴です。

人が生きている領域について

人のキャリアに影響を与えるものとして、仕事上の事柄だけではなく、結婚や出産などの家族関係や加齢などの生物学的・社会的要因も挙げている。

これら人が生きている3つの領域の影響を受けて、個人のキャリアが形成されると考えています。

キャリア・アンカーについて

キャリア・アンカーは、シャイン博士の代表的なキャリアの理論ですね。

キャリア・アンカーとは、組織や環境などの影響を受けても、個人が決して失わないその人の仕事に対する自己イメージです。

このアンカーとは、錨のことです。船を固定する錨のように、仕事で様々な経験をしても変化せず、その人の仕事に対する考えを一定なものに保つものです。

そして、「どんな仕事が好きか」「どんな仕事にやりがいを感じるか」「どんな仕事が得意か」などの問いの答えが合わさった複合的な自己イメージです。

このキャリア・アンカーは中学生や高校生など職業経験が乏しいと見えてこないといいます。様々な職業経験を積んでいく中で、浮かびあがってくるものだということです。「何が得意で、何が好きかは、やってみなきゃわからない」ってことですね。

キャリア・アンカーは全部で8タイプあります。(その8タイプについて詳しくはコチラをご覧ください)基本的にどの人もそのうちのどれかに当てはまり、それは時間がたっても変化しないと考えます。

キャリア・サバイバルについて

キャリア・サバイバルは、「職務と役割の戦略的プランニング」ともいいます。これは、組織のニーズを分析する手法です。

組織の内外の利害関係者から期待されている職務や役割を洗い出していき、未来に向けてそれがどうなっていくかを分析していく営みです。このように時間が経つにつれ、どのように変化するのかということを予測してプランニングしていくのがポイントになります。

具体的には、次の6ステップでおこないます。

①現在の職務と役割を棚卸する

②環境の変化を識別する

③環境の変化が利害関係者に与える影響の評価

④職務と役割に対する影響を確認

⑤職務要件を見直す

⑥プランニング・エクササイズの輪を広げる

キャリア・コーンについて

キャリア・コーンとは、外的キャリアの観点から組織内での異動をモデルにしたものです。

組織内の異動というと、営業部から人事部に異動するような部署を横断するような横異動と係長から課長に昇進するといった職階を超える縦異動は思いつきやすいと思います。

それに加えて、シャイン博士は組織の中心に向かう異動を3つ目の動きとして取り入れています。この3つ目の中心に向かう動きというのが少しわかりづらいです。

中心に向かう動きというのは、組織に対する影響力が高くなったり、組織の様々な情報が入ってきたりするようになっていくという動きです。

この動きを理解するには、釣りバカ日誌のハマちゃんを考えるのが分かりやすいですよ。かなり特殊なケースではありますが。

キャリア・サイクルについて

キャリア・サイクルとは、シャイン博士の提唱するキャリアの発達モデルです。組織内キャリアにおける発達段階と発達課題を表したものです。

特徴的なのは、キャリアの後期のカテゴリーが二つに分かれているところです。これは、キャリア・アンカーの考え方とリンクしているところです。

簡単にキャリア・サイクルの内容を以下に挙げます。

上段が発達段階で、下段が発達課題です。

1.成長・空想・探求(0~21歳)

現実的な職業選択のための基準を開発する

2.仕事の世界へのエントリー(16~25歳)

組織なり職業のメンバーになる

3.基本訓練(16~25歳)

仕事の世界での現実(自分の無能感)に直面し、そのショックに対処する

4.キャリア初期の正社員資格(25歳以降)

責任を引き受け、最初の正式な任務に伴う義務を果たす

5.キャリア中期の正社員資格(25歳以降)

専門を選び、ゼネラリストや管理者となる方に向かう

6.キャリア中期の危機(35~45歳)

自分のキャリアの再評価を行い、現状維持か、キャリアを変えるかを決める

7-A.非指導者役にあるキャリア後期(40歳から引退まで)

助言者になる

7-B.指導者役にあるキャリア後期(40歳から引退まで)

組織の現実的評価と長期的繁栄に自分の技術と才能を役立てる

8.衰え及び離脱(40歳から引退まで)

権力、責任及び中心性の低下を受け入れる

9.引退

ライフスタイル、役割、生活水準における劇的な変化に適応する

本日は、エドガーシャイン博士のキャリアの理論をできるだけ簡潔に解説してきました。キャリアコンサルティングの現場で非常に有用な理論ですので、より理解を深めていきたいという方は、ぜひ下記の参考文献をご覧ください。

(参考文献)

キャリア・アンカーについて焦点を合わせた本です。キャリア・アンカーについての理論の詳細や具体的な内容が載っています。ワークができるようになっています、時間がかかりますがひとつづつエクササイズを行えばより深く理解することができます。

実践からの目線で、シャイン博士のキャリアの理論が包括的に述べらています。実際にシャイン博士の支援した具体例が載っていて、どうして博士がこのような考えを持つにいたったのかが理解できます。

キャリアの理論の教科書的な本です。僕にとっては、非常に読みやすく、何度も読み返しています。

キャリア・サイクルについては、この本の64ページに載っている表が一番参考になりました。

特集記事
最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page