シャイン博士に学ぶ「本質的な問題」を見出すクライアントとの関係性の築き方
本日は、キャリアアンカーなどで有名な組織心理学の大家であるエドガーHシャイン博士が著作「謙虚なコンサルティング」の中で提唱しているクライアントとコンサルタントの関係性について記述していきます。
僕にとって、非常に腑に落ちる考え方でした。キャリアコンサルタントとしてだけではなく、対人支援の仕事すべてにおいていえる考え方だと思います。こんな対人支援者がいっぱいの世の中になると良いなぁって思います。
往々にしてよくあるコンサルタントとクライアントの関係
コンサルタントとクライアントのよくある関係性は、コンサルタントが主で、クライアントが従の、主従関係のような関係性です。先生と生徒、医者と患者のような関係性です。
さて、コンサルタントの仕事は、クライアントの抱えている問題を解決することです。問題は、クライアントの中にあります。しかし、クライアントが問題だといっていることが「本質的な問題」ではないこともあります。
問題解決において、問題設定を誤ることは致命的です。
主従のような関係性だとクライアントの話す内容をもとに、コンサルタントが問題を見立てます。問題はクライアントの中にあるのに、コンサルタントが問題を見立てるとなると、「本質的な問題」を見立てることは非常に難しく、間違えた問題設定をしてしまう可能性は高いのではないかと、僕は常々感じていました。
もちろん、目に見えて明らかな問題に対するアプローチだったらいいです。しかし、目に見えて明らかな問題が「本質的な問題」の解決につながるケースは少ないのじゃないでしょうか。
キャリアコンサルタンティングにおいては、クライアントが自身の問題が何かに気づいていない場合が多くあります。うわべだけの問題を解決しても、クライアントの「本質的な問題」は決して解決されません。
「個人的に打ち解けた関係」が、「本質的な問題」を引き出す
それでは、どうやって「本質的な問題」をクライアントから引き出すかを考えていきましょう。これに対する一つの方法として、シャイン博士はクライアントとコンサルタントの関係性について提言しています。
それは、クライアントとコンサルタントが「個人的に打ち解けた関係」になるということです。
なぜなら、「本質的な問題」が何かを突き止めるには、クライアントとコンサルタントが信頼しあい、率直に話ができることが必要だからです。
あなたは、信頼できる人に悩み相談をしたことはありませんか?
話しているうちに、あなたにとって何が問題で何に対して悩んでいるのか、自分の中ではっきりしてきたことに気づいたことはありませんでしたか?
一人では見出せなくても、安心できる対話の中で自己洞察が深まり、自分自身についての理解が深まることはよくあります。キャリアカウンセリングもこれを意図して、相談者とかかわります。
つまり、「個人的に打ち解けた関係」における対話が、クライアントが「本質的な問題」に気づくことを助けるということです。そして、「個人的に打ち解けた関係」が築けていると、それをクライアントが話してくれます。
クライアントとの「個人的に打ち解けた関係」の築き方
シャイン博士は、クライアントとの「個人的に打ち解けた関係」の築き方として、以下のよう姿勢を示唆しています。
何とか役に立ちたい」と思って全力を尽くすこと
誠実な「好奇心」を溢れんばかりに持つこと
適切な思いやりのある姿勢を持つこと
クライアントの本当の思いを積極的に突き止めようとすること
これが、僕には非常に腑に落ちました。
というのも、僕が広告媒体の営業をしていた時の経験が原因です。
営業も一種の対人支援です。目の前の顧客の要望に応えるのが仕事の一つです。しかし、新人時代、顧客が全然その胸の内を話してくれませんでした。
時に、勇気を出して、直接的に質問してみました。しかし、それに対する答えは、明確な拒絶でした。
このような関係性だと、顧客の表面的な要望に応えるだけしかできません。それでは、まったく良い仕事はできません。本当に悔しい想いをしていたのを覚えています。
しかし、「何とか役に立ちたい」と思う気持ちを持って、顧客と向き合い出してから、顧客との関係性が激変しました。
始めは、アポイントもあまり取れませんでした。
「何とか役に立ちたい」と思って、働きかけをしだしてからは、
アポイントが取れるようになり、
顧客から相談をしてくださるようになり、
ついには向こうからアポを取りにきてくださるようになりました。
このおかげで、営業成績はずっと目標を達成できる状態になりました。僕にとっては大きな成功体験です。
キャリアコンサルタントして、キャリアカウンセリングを行うときなど、ともすれば「クライアントの問題を解決してやろう」みたいな気持ちで接してしまうのではないでしょうか?
しかし、シャイン博士は、「謙虚に」「真摯な好奇心を持って」「何とか役に立ちたいと思いながら」クライアントと一緒に解決しようという気持ちで接してみようと提言しています。
これらは、カウンセリングの大家のロジャーズが言及している内容と似通っているように僕には思えます。
対人支援者として、僕はこのような姿勢をしっかり持ったキャリアコンサルタントであり続けたいと思います。
<参考文献>