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キャリアストーリーインタビューの5つ目 「幼い頃の思い出」についての質問の具体的な進め方とその効用

キャリアストーリーインタビューの5つ目として、「幼い頃の思い出」について質問します。今日は、この「幼い頃の思い出」の、何を聴くのかということや、なんのために聴くのかということについて考えていきたいと思います。

サビカス博士の提唱するライフデザインカウンセリングを活用したキャリアカウンセリングを行っていきたいと考えている人にとっては、抑えておきたいポイントですので、そのような方には是非読んでいただきたいと思います。

まずは、僕自身にこの質問をした場合を具体例として記述していきます。括弧の中はカウンセラーの発言です。(これは具体例として簡素化しています、実際にはもう少し様々なやり取りがあります)

幼い頃の思い出

「幼い頃の思い出」の質問の手順

(幼い頃の思い出は何ですか?3歳から6歳までに起きたことについて3つのストーリーを聴かせてください。)

1つ目は、階段の下で、一人隠れていた時の思い出です。

よく、階段の下に隠れていたのを覚えています。僕がいなくなったら、家族がどんな反応をするかが見たかったのです。気をひきたかったのでしょう。心配してほしかったというのもあると思います。でも結局誰も僕がいないことに気づかずに、僕は飽きてそこから出たんだと思います。

2つ目は、お兄ちゃんのあとをついて回ってた思い出があります。

僕には1学年上の兄がいます。僕には友達がいなかったのですが、先に幼稚園に行きだした兄には友達がいました。その兄と兄の友達と遊ぶのが楽しくて、兄が遊びに行くのに良く連れて行ってもらっていました。しかし、そのうち兄の友達が兄に、僕を連れてこないでくれというようになり、次第に連れて行ってもらえなくなりました。

3つ目は、階段の柵を潜って抜けようとしていた思い出です。

僕は、2世帯住宅の2階に住んでいました。階段から落ちたら危ないので、階段に柵を設けていました。その柵の下部に少し隙間があって、僕は良くそこを潜って抜けていました。それを抜ける挑戦自体がおもしろかったというのもあります。でもそれ以上に、兄は頭が大きくそれを潜れなかったので、そんな兄に対する優越感もあったと思います。

(その思い出にそれぞれ感情を与えるとしたら、どんな感情でしょうか)

1つ目は、「寂しい」でしょうね。もっと家族にかまってほしかったのに、かまってもらえなかった。そんな孤独感の表れだと思います。

2つ目は、「親しみ」です。兄に対して、非常に強い親しみの気持ちを持っていました。兄の存在は幼少期の僕にとって大きかったと思います。

3つ目は、「優越感」です。「劣等感」ともいえるでしょうが、これも兄に対しての感情です。両親や祖父母にお兄ちゃんじゃなく、もっと僕に注目してほしかったという気持ちから、こういう感情につながったのかなと思います。

(その思い出の最も鮮やかな部分を写真に撮ったとしたら、何が写っていますか?)

1つ目は、階段の下でしゃがみ込みながら、周りを伺う僕です。

2つ目は、兄の背中を追いかける僕です。兄が優しい顔で振り返っています。

3つ目は、階段の柵の下に頭を挟んでいる僕です。

(それぞれの思い出に見出しをつけてみましょう。映画のタイトルみたいなものです。良い見出しには動詞があります)

1つ目は、「僕がいなくなったことに、気づいて」です。

2つ目は、「優しいお兄ちゃんの背中についていくよ」です。

3つ目は、「僕にはできる。僕は特別なんだ」です。

これらの「幼い頃の思い出」に関する質問は、簡単にポンポンと答えが出てくるものではありません。相談者が自己探索を行い答えを探すのを、カウンセラーは適切な問いかけを行うことによりサポートします。

キャリアストーリーインタビューは、そのあとにライフポートレートを再構成するために行います。しかし、キャリアストーリーインタビューを行うこと自体が、相談者の自己理解を深めるという価値があることもご理解いただけると思います。

「幼い頃の思い出」を語る効用

さて、簡素化してありますが、「幼い頃の思い出」についての質問の具体例をみてきました。この内容は、「今」の僕が、過去をどう捉えているかを表しています。つまり、これは不変のものではありません。

現在、何が知らかの転機に直面しているとしましょう。その転機に際して、人は問題を抱えます。その今抱えている問題や、それにどう対処するのかといったことが、「幼い頃の思い出」に反映されるのです。

つまり、「幼い頃の思い出」を語ることにより、転機に対してどういう視点で捉えているか、という点が浮かびあがってくるのです。これが、「幼い頃の思い出」を語る効用です。

これは、次に行われる、ライフポートレートの再構成に非常に深くかかわってきます。そういう意味で、「幼い頃の思い出」を聴くことが、キャリアストーリーインタビューの中心的な質問だといえるのです。

<参考文献>

毎度おなじみの2冊です。わかりづらいですが、何度も読むと理解が深まってきます。マーク・L・サビカス博士のライフデザインカウンセリングの手法を取り入れたキャリアカウンセリングを行う方は必見ですし、キャリアカウンセリングの課題や未来について考える機会を得ることもできる本だと思います。読みづらいですが。

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